堀川一宙様は、千葉県成田市を拠点に、レンコンを中心とした農業を営まれてきました。
農業法人での勤務経験を経て独立し、自然の堆肥を活用した土づくりや、農薬・除草剤の使用を極力抑えた栽培を続け、安全性と品質を重視した農産物づくりに取り組んでこられました。近年は米づくりにも進出し、ドローンによる直播という新しい農法にも挑戦されています。
今回の補助事業では、その米を玄米のまま出荷する従来型の一次産業にとどめず、自ら精米・加工・販売まで手掛ける6次産業化へ進出します。
主力となる白米に加え、これまで十分な価値を付けられなかった「くず米」を活用した煎餅や米粉団子を商品化。道の駅、直売所、地元スーパー、ECなどを通じて一般消費者へ直接届ける、新たな事業モデルの構築を目指しています。
一次産業から「自ら価格をつくる農業」へ――6次産業化を決断した背景
農業経営には、農産物の市場価格や天候、燃料・資材価格など、自社だけではコントロールできない要因が数多くあります。主力であるレンコンも、市場単価や資材費の影響を受けており、新しい収益の柱をつくることが課題となっていました。
そこで着目したのが米事業です。
単に米を生産して玄米として出荷するのではなく、精米・加工・販売まで自ら手掛けることで、農産物に付加価値を加え、自ら販売価格を設計できる事業へと転換します。
さらに、くず米を煎餅や団子として商品化することで、これまで十分に活用できなかった農産物にも新たな価値を生み出します。これはフードロス削減にもつながる取り組みです。

煎餅と団子の製造
「ドローン×土づくり×6次産業化」――強みを事業計画に
今回の計画で重要なポイントとなったのが、単なる「米の加工事業」とするのではなく、これまで培ってきた農業技術と、新しい生産技術を組み合わせた事業として構築することでした。
レンコン栽培で培ってきた堆肥による土づくりのノウハウを米づくりにも応用。さらに、苗づくりや田植えを省略できるドローン直播を取り入れることで、省力化と生産コストの低減を図ります。
弊社では、「高品質な農産物をつくる力」×「ドローンによるスマート農業」×「加工・販売による6次産業化」という一連のストーリーとして事業計画を策定支援しました。
玄米の卸売では市場価格の影響を強く受けますが、精米・直販まで手掛けることで、より高い付加価値を生み出せる可能性があります。事業計画でも、玄米卸価格に対して、精米・加工品では1.5~2倍以上の価格帯を目指す考え方を明確にしました。
ご依頼者様インタビュー
インタビュアー 『補助金採択の羅針盤』清水
インタビュイー 堀川一宙様
補助金活用を検討した背景
清水
今回、新事業進出補助金の活用を検討されたきっかけを教えてください。
堀川様
もともとはレンコンを中心に農業をやってきましたが、農業はどうしても市場価格の影響を受けます。一生懸命良いものを作っても、自分たちで価格を決められない部分が大きいんですね。燃料や肥料、資材の価格も上がっていますから、「作るだけ」の農業を続けているだけでは、今後経営を安定させるのが難しくなるという危機感がありました。
ちょうど米づくりにも取り組み始めていたので、だったら玄米で出荷するだけではなく、精米や加工まで自分たちでやって、付加価値をつけて販売できないか、と考えたのが今回の事業のスタートです。
清水
米づくりでは、ドローン直播という新しい方法にも取り組まれていますね。
堀川様
はい。農業はこれからますます人手の確保が難しくなると思っています。ドローン直播なら種もみを直接播くことができるので、育苗や田植えの工程を大幅に省くことができます。
父も長年米づくりをしてきましたので、昔からの農業技術と、新しい技術の良いところを組み合わせながら、次の世代でも続けられる農業にしていきたいという思いがありました。
ドローン直播
補助金申請~採択まで
清水
今回、エム・アイ総研のサポートを受けて、特に良かった点はどこでしょうか?
堀川様
自分の中では「こういう農業をやりたい」というイメージはありましたが、それを事業計画として説明するとなると、まったく別の話でした。
ドローンを使うこと、良い米を作ること、加工品を作ること。それぞれは考えていたのですが、「既存事業と何が違うのか」「どうやって収益につなげるのか」というところまで、一つのストーリーにするのは難しかったですね。
エム・アイ総研さんと話していく中で、単なる設備投資ではなく、「一次産業から6次産業へ進出し、自分たちで付加価値をつくっていく事業なんだ」ということが明確になりました。
清水
計画書を作成する中で、特に印象に残ったことはありますか?
堀川様
競合や市場をきちんと調べたことですね。農業をしていると、どうしても「良いものを作れば売れる」と考えがちですが、実際には誰に、いくらで売るのかまで考えなければ事業にはなりません。
道の駅や直売所など販売先の候補を具体的に出してもらったことで、「採択された後に自分が何をするのか」がかなり見えるようになりました。
商品についても、試作品を作って、地域の方や販売先の意見を聞きながらパッケージや味を改善していくという考え方は非常に参考になりました。
採択後の事業への変化
清水
採択が決まったことで、事業に対する考え方に変化はありましたか?
堀川様
かなりあります。もちろん補助金を活用できること自体も大きいですが、それ以上に、「この事業を本当に形にしていくんだ」という覚悟が強くなりました。
今回の事業では加工場を新設して、精米機だけではなく、団子や煎餅を製造するための設備も導入します。今までの農業とは違い、製造、衛生管理、商品開発、営業、ECなど、やるべきことが一気に増えます。
だからこそ、従業員それぞれの役割を明確にし、「組織」として事業を運営していく必要があると感じています。
清水
将来的には、どのような事業にしていきたいと考えていますか?
堀川様
まずは「堀川さんのところのお米なら安心だよね」と言ってもらえるような商品を作りたいです。どういう土地で、誰が、どういう考え方で作っているのかまで含めて伝えていきたいですね。
その上で、煎餅や団子などの商品も増やしていき、道の駅やスーパーだけでなく、ECなどを通じて地域外のお客様にも知っていただきたいと思っています。
もう一つ大きいのは農地です。周辺でも高齢化で農業をやめる方が増えています。そうした農地を引き継ぎながら事業を大きくしていければ、地域の農地を守ることにもつながります。
若い人が「農業も面白そうだ」と思えるような事業にしていきたいですね。
これから申請される方へメッセージ
清水
最後に、これから補助金申請を検討されている事業者の方へメッセージをお願いします。
堀川様
補助金というと、どうしても「設備を安く買うための制度」というイメージを持ってしまうと思います。でも、実際に事業計画を作ってみると、自分の事業の強みは何なのか、5年後にどんな会社や事業にしたいのかを考える機会になりました。
第三者に質問してもらいながら、数字や市場、競合まで含めて事業を見直したことで、自分自身も事業への理解が深まりました。「これから自分たちは何をやっていくのか」を具体的にするために補助金を使うという考え方が大事なのではないかと思います。